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C型肝炎と鉄制限食

鉄制限の意義

最近、C型慢性肝炎において「鉄分が肝臓に過剰に蓄積し、鉄依存性の酸化ストレスが高まり、肝障害を引き起こす」との「鉄の肝毒性」に関する多くの報告があります。(米国ではC型肝炎ウイルスに感染したチンパンジーに、鉄が多く含まれたビスケットを食べさせると肝臓病が悪化するとの報告があります。 日本でもC型肝炎ウイルスの遺伝子を発現したネズミに鉄分を5倍食べさせたら、肝臓がんに進行したとの報告もあります)。

健康な肝臓の場合、体内の鉄分量を一定に保つように肝臓がヘプシジンというホルモンを出してコントロールしていますが、C型慢性肝炎では鉄の調整機構が上手く働かないため、鉄が過剰に肝臓に蓄積されることになります。

鉄分は体内に酸素を供給する赤血球中のヘモグロビンを構成する栄養素のひとつです。鉄が肝細胞内で2価から3価の鉄イオンになるときに生じるフリーラジカルが肝臓の細胞膜やDNAを傷つけるため、肝炎の進行や肝がんの発生に影響をあたえていると現在では考えられています。

1991年から北陸薬大名誉教授 林久男先生らがC型慢性肝炎の患者に対し、鉄分が多く含まれる赤血球を除去する瀉血(しゃけつ)療法を行った結果、GPT値(ALT値と同じ)の低下を認めています。

このように、鉄過剰になりやすいC型慢性肝炎にとって、鉄分の摂取には充分な注意が必要です。

除鉄治療(鉄制限療法)の種類

除鉄治療(鉄制限療法)の代表的なものは、瀉血(しゃけつ)療法と鉄制限食です。

<瀉血療法>

瀉血とは血液を対外へ排出することで、献血と同じように腕の静脈に針を刺して血液を抜き取ります(瀉血量によっては注射器を使用する場合もあります)。
血液を排出することで血中のヘモグロビンと同時に鉄分も抜き取るわけです。200mlの瀉血を行うと鉄は約100mg除去されます。(2006年4月より保険適用)

<鉄制限食>

食事によって体内に取り込まれる鉄分をコントロールします。1日6mg以下の鉄分量が目標値です。鉄分は牛肉などの肉類をはじめ動物の内臓(レバーなど)に多く含まれています。小魚や貝類(シジミ、アサリ等)は内臓ごと食べる場合が多いので、避けたほうが賢明です。また、大豆などの豆類にも多く含まれています。味噌汁よりもすまし汁をお勧めします。逆に鉄分の少ない食材としては、肉類では鶏肉、豚肉、ハム、ソーセージ等、魚では白身魚、エビ、カニ、タコ、イカ等です。牛乳やチーズ、ヨーグルトなどの乳製品も鉄分の少ない食品です。

鉄制限食のすすめ

つい最近まで、肝臓食(肝臓病食)として、高たんぱく質・高カロリー・高ビタミン食が推奨されてきました。この栄養療法の根拠は、1941年にポーランドのPatek先生「一日中酒しか飲まないアルコール性肝硬変の患者さんに、禁酒とともに高たんぱく質・高カロリー・高ビタミン食の食事療法を行ったところ、生命予後が改善する」と報告された論文を誰かがそのまま鵜呑みにして日本の肝臓食として定着させたようです。

しかし、わが国ではアルコール性肝硬変は少なく、ウイルス性の慢性肝炎・肝硬変が大多数を占めています。また、民間療法としてシジミやレバーなどグリコーゲンが多く急性肝炎に良いとされる鉄分の多い食材が、慢性肝炎にも有効だと信じられて来ました。

鉄分が肝臓病に悪い影響をおよぼすことが明らかになった今日、従来常識とされてきた鉄分の多い肝臓食(肝臓病食)をとり続けることは、肝臓病の悪化を招きます。
推奨される鉄制限食の内容は「鉄量6mg/日以下、エネルギー30kcal/kg/日、蛋白1.1〜1.2 g/kg/日、脂肪比率20%」です(C型慢性肝炎患者対象)。


鉄制限食療法を行うにあたっては、独断で実施しないで主治医の先生および栄養士の先生に相談することが必要です。

<監修:三重大学医学部臨床教授・みえ消化器内科院長 垣内雅彦先生>